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2009/10/07

土砂崩れに命を奪われた友人一家

NHKのニュースはもっぱら台風18号の話ばかり。日本にいる皆さんはぜひとも気をつけてください。

こちらフィリピンの北ルソンでは、いったん通り過ぎたはずの台風17号が、こともあろうか、南シナ海でたっぷりと水分を補給し、そのまま引き返してきている。往路では逸れたはずのコルディリエラ山地を、復路でご丁寧にたどろうというのだから迷惑な話だ。

この背後には、ちょうど真横を通過して日本に向かっている台風18号との力関係の影響など、いろいろな要因があるらしい(「藤原効果」(?)などという専門用語を初めて耳にした)。一口に台風といっても、一つの有機体ではなく、瞬間々々の大気の流れの移り変わりが、何か生きて意志を持ったもののように見えるだけなので(これはこちらのアニメーションなどを見ているとよくわかる)この山地に常に集まる温められた湿った空気が呼び水のような働きをしたのだろうが、嬉しい話ではない。少し前にPAGASAに発表された図を貼っておく。最新のものは、また違った予報がされているかもしれない。

 

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この台風17号に友人一家を奪われた。3日夜から4日未明にかけて、バギオ市の私たちのキャンパスのすぐ近くで土砂崩れがあった。地理的にはラ・トリニダード郡ベッケル町に入った場所だ。幅にして大規模なものではなかったが、幹線道路アンブックラオ・ロードの少し上から始まったこの土砂崩れは、直径2m近くの岩をいくつか伴いながら細く、しかし約80m下の集落をまっすぐに襲った。岩は友人の家を直撃、家は跡形もなく破壊され、大量の土砂が覆った。

友人は26歳の女性。数年前に結婚したばかりのご主人と10か月の娘さん、自らのご両親という一家5人が犠牲となった。被害に遭ったのはこの1軒のみ。朝5時頃に異変に気づいた付近の住人が、暴風雨の中、約5時間かけて5人の遺体を掘り出した。5人の遺体がほぼ無傷だったのが唯一の慰めだった。

私は月曜日に知らせを聞き、何人かの職員と学生と様子を見に伺った。キリスト教系の大学院でもあり、被災した地域の人々に食料や古着を提供するなど何かお手伝いすることができないかと思ったのだ。まさか、その一家がこともあろうに友人一家だとは思わなかった。まさか、その友人が、変わり果てた姿で棺の中に横たわっているとは思わなかった。今でも信じられない。混乱したまま、思いは過去と現在の間をさまよう。

私たち夫婦は約10年前にフィリピンに来た。地元の教会で知り合った彼女は、UBスクエアの2階にあるキリスト教書店で働いていたこともあってすぐに親しくなり、右も左もわからない私たちに何かと親切にしてくれた。彼女が店を辞めてからはなかなか会う機会も無くなったが、同じ沿線の住人同士、ジプニーで会うとお金を出してあげたり、出してもらったりのつき合いが続いた。最近は、地元の教会の合同のお楽しみ会で寸劇を演じる姿や、赤ちゃんを抱いて幸せそうにしている姿を見て、元気そうでいるのを嬉しく思っていた。お母さんと同じ棺に入れられた娘さんだけが額が大きく割れた傷跡があり、その小さな姿とともに、突き上げてくるものを抑えられなかった。

明日は埋葬式だ。このままだと、再び、戻ってきた台風(ないしは弱まった熱帯低気圧)の暴風雨の中での埋葬式になる。友人一家はクリスチャンだったので、信仰においては既に天国の安らぎの中にあるということになる。再び会える - これはクリスチャンの希望だ。天国には、この世では得られない良きものがあることだろう。それでも、いまだこの世にある人情からすれば、かなわなかった夢、思い半ばで終わってしまったことも多いだろう。とりわけ、愛する者たちを突然にして奪われたご遺族のために平安を祈らずにはいられない。

 

姉妹ブログにも書いたように、キリスト教系の団体からも、その他からも、各地の被災地には多くの支援がなされつつある。日本の被害が最小限に抑えられることを祈るとともに、被災地の一日も早い復興、人々の心の癒しと平安を祈りたい。

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コメント

 台風の週末、夫はスービックに来ていたのですが、ひっきりなしに被害情報の電話連絡がありました。その中に、一家族が土砂に埋まって亡くなった、というのがありましたが、これがりけるけさんのお友達だったんですね。本当にお気の毒です。
 こちらでは、数週間前に大洪水がありました。スタッフの従兄弟が、水の中を歩いたことがもとでワイル病にかかり、洪水が去った2週間後に突然亡くなりました。
 洪水は、去った後も安心できません。りけるけさんも、感染症にはくれぐれもご注意ください。

投稿: みささび | 2009/10/07 17:18

みささび さん

コメント、ありがとうございました。その後の被害の拡大でお返事が遅れ、すみませんでした。

洪水後の被害については、おっしゃるようにいろいろな感染症が報道されていますね。お知り合いの親戚のその方もお気の毒なことでした。

上の記事ではプギスの土砂崩れの被害について多く触れていますが、盆地のラ・トリニダードも、一面、湖か沼地のような様相だったと、山の反対に住んでいる者としては今になって聞かされて驚きます。

台風20号は、沖縄のほうに北上するという気象庁の予報と、そのまま16号、17号以上の勢力で北ルソンに上陸するというPAGASAの予報が競合しています。これ以上の被害は見たくないものです。

みささびさんも、少し南のほうではありますが、くれぐれもお気をつけて。特にブライアンくんのご息災を祈ります。

投稿: りけるけ | 2009/10/21 23:09

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