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2009/01/31

フィリピンをまた少し知るために

統計上は国民の85%がローマ・カトリック教会の信徒、10%がプロテスタント諸教派の信徒と言われるフィリピン。最近でこそ、韓国がそれに取って代わりつつあるとはいえ、依然としてアジアで唯一の「キリスト教国」と呼ばれるゆえんだ。フィリピンの「キリスト教」ならびに「キリスト教徒」の実情はさておき、その根本的な哲学や思想、文化的背景の一端を占めるキリスト教について知っておくことは、フィリピンをまた少し知ることにつながるかもしれない。

キリスト教の入門書は文字通り無数に存在するが、一番気軽に読めるのは、八木谷涼子著『知って役立つキリスト教大研究』(新潮社, 2001年)だろう。

八木谷 涼子 著
『知って役立つキリスト教大研究』
(新潮OH!文庫)

キリスト教徒ではない著者によって書かれたこの本は、フィリピンに来る誰もが素朴に抱くカトリックとプロテスタントさらには東方正教会の違いに始まり、フィリピンでもよく耳にする「バプテスト」「ボーナゲン(ボーン・アゲイン)」「ペンテコスタル(ペンテコステ)」など、プロテスタント内の様々な教派の違いについても、教会堂の建築様式や礼拝様式、司祭(神父)、牧師のユニフォームの違いまで、著者自らの手によるイラストを交え、わかりやすく説明してくれている。

また、フィリピンのキリスト教信仰の実情について、もう少し立ち入ったことを学びたいという方には、関一敏・大塚和夫編『宗教人類学入門』(弘文堂, 2004年)に収められている寺田勇文著「キリスト教」(73-91ページ)がお薦めだ。

関 一敏・大塚 和夫 編
『宗教人類学入門』

「世界宗教としてのキリスト教」「「外来」と「土着」」「グローバル化の中のキリスト教」という3節を設け、世界宗教としてのキリスト教の概観、フィリピン国内に見られる、純粋に輸入されたキリスト教信仰と土着宗教と混交した「キリスト教信仰」、さらにはブラジルやペルーなどの南米諸国からの人々も含めた「出稼ぎ」の人々が、日本のとりわけカトリック教会にどのような影響を及ぼしているかについて、興味深い実例を取り上げつつわかりやすく説明してくれている。一章分を読むために一冊購入するのははばかられるという方も、時間が許せば図書館などを利用して一読してみるというのもいいかもしれない。

また、キリスト教のそもそもの開祖であるイエス・キリストなる人物について知りたいという方には、拙訳で恐縮ながらマイケル・グリーン著『イエスとは誰なのか?』(地引網出版, 2008年)をお薦めしたい。

マイケル・グリーン 著
吉原 博克 訳
『イエスとは誰なのか?』

この本には、イエスの生まれた歴史的背景、その言葉、その行い、その生涯の意味、その死と「復活」の意味、キリスト信仰というものの意味、教会というものの意味、聖書、特に新約聖書に収録されている福音書と呼ばれる4巻の書物の概観と信頼性、イエス・キリストをめぐる聖書以外の歴史的資料の紹介などが、イギリス国教会の司祭で、キリスト教の伝達と受容についての研究では世界的に知られた著者の手によって淡々と、時には情熱的に、提示されている。

 

フィリピンにいると、この国を「キリスト教国」とはとても呼びたくないような場面にも出くわす。あるいは「さすがキリスト教国……」と言いたくなる場面もあるかもしれない。それらはいずれも、あくまでキリスト教に対する私たちのイメージが肯定的な場合であって、さもなくば「これだからキリスト教は……」「意外にもキリスト教は……」ということになるだろう。いずれにせよ、私たちの目にするものがフィリピンという国のありのままの姿なのであり、キリスト教という宗教のフィリピンにおけるありのままの姿であることに変わりはない。

これらの資料に触れることにより、私たちが、キリスト教というレンズを通して、さらにこのフィリピンという国を違う角度から見つめていくことができれば、私たちの訪問や滞在もまた、豊かで実り多いものになっていくのかもしれない。

 

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コメント

ごぶさたです。

まさにおっしゃっている通りですね。私もブログでその関係を書こうと思っては躓いていましたが。

りけるけさん翻訳の本、よさそうですね。一冊購入いたします。
それを妻に読ませないと(笑)

投稿: tacchy | 2009/02/07 16:35

tacchy さん

コメント、ありがとうございました。こちらこそ、ごぶさたしています。

フィリピンとキリスト教の問題は、広く、深く、複雑で、社会的な領域と文化的な領域、宗教的な領域がもつれ、絡み合って、なかなか一筋縄ではいきません。これからも、tacchyさんの視点からご覧になってのご意見など、お聞かせいただけましたら幸いです。

拙訳の本につきましては、ご購入いただけると嬉しいです。日本にいれば贈呈することもできるのですが、失礼をいたします。また、感想などお聞かせください。

これからもよろしくお願いします。

投稿: りけるけ | 2009/02/08 17:57

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