2013/04/11

デザート・ワリーム?

フィリピンには様々な日本食レストランがあるが、その名も"Tokyo Tokyo"(東京・東京)もその一つ。"Takuyaki"(タクヤキ)を初めとする多くの同業者が、ほぼ「ばったもん」の領域を突き進んでいる中で、ここは可もなく不可もなく。以前は白身フライ弁当が大好きで足繁く通っていたが、長年のフィリピン生活がたたったのか、エビアレルギー、白身魚アレルギー(不思議に日本に帰ると治っている)になってしまい、しばらく足が遠のいていた。

今日、約5年ぶりに足を運んでみたTokyo Tokyoは、コンボ(Combo)と呼ばれるラーメンと餃子のセットが美味。ラーメンも、Spycy ChikenとMisono(当地ではなぜか味噌のことをこう呼ぶ傾向がある)の両方が、追加で頼んだSalmon Domburi(サーモン丼)のライスについつい汁かけをして仕上げてしまうほど、いい味だった。ちなみに、このサーモン丼は、何かかまぼこを揚げたようなB級なトッピングで、大したことはなかった。

笑えたのはプリンのようなデザート。コーヒーとグリーンティー、マンゴーの3種類の味があって35ペソ。味は良く、SMに行った際には、食事はしなくともこのスイーツだけ買って帰ってもいいかなと思えるほどの一品なのだが、ラベルに書かれているのは"Creamy Desserts"(デザート・ワリーム)。明らかに「クリーム」が「ワリーム」になってしまっている。商品としての仕上がりがまずまずなだけに、ネタか?とさえ思えるほどのおマヌさ。日本人責任者、出てこい!とツッコミを入れたくなるほどのオチだ。

思えば、Teriyaki Boy(太った少年)では「うどん」が「らどん」に(温泉か?)、最近、バギオにもキャンプ・ジョン・ヘイに出店を果たしたSumo Samでも「にくうどん」が「にきうどん」になっており、何かとゆるいというか、詰めの甘い、フィリピンの日本食チェーンだ。この「デザート・ワリーム」も、中途半端な日本語を使うことで、何か、日本に対して実は微妙な嫌がらせをしようとしているかのような、密かな仕掛けなのかもしれないが、「デザート・ワリーム」という響きがどこまでも憎めないのもまた、妙にフィリピンらしく思えるのだ。

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表面はミルクムース、下半分は抹茶ムースの優れもの。

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左がコーヒー、右がマンゴー。甘すぎず、まろやかな味が楽しめる。

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2013/04/08

マニラ・オーシャン・パーク

「これこそリゾートだ!」というビーチや自然の美しい島嶼部に比べ、見どころがあるような無いような、なのがフィリピンの都市部の観光名所。自分で出かけるとなると、B級、下手をすればC級のカスタマーサービスに疲れ、はて、日本からのお客さんを連れて行くとなるとなおさら選択に困るものだが、このたび、日本からの親子連れをマニラでおもてなしすることとなり、思い切ってオーシャン・パークに行ってみた。2008年の開業ということで、友人たちからの噂も聞いてはいたが、なんとなくおっくうなまま、時間だけが過ぎていたのだ。

営業日や場所などの詳細はウェブサイト英文ウィキで確認していただくとして、車で行く場合、平日に限ってはゆったり止められそうな屋外の駐車場がある。正面入口のすぐ右手の駐車場は隣接するホテルH2Oの駐車場なので宿泊客以外は駐められない。日帰り客用の駐車場は、正面入口から少し離れた左手にある。すなわち、敷地内に入ってくると、まずは正面入口で家族などを降ろし、さらに奥の方に進んで止める形になる。

入場料金は、観ることのできるアトラクションの数に応じて3段階に設定されており、私たちは、半信半疑、リスクを避けて一番安い550ペソのオプションを選んだ。チケットには、メインの水族館に加え、クラゲ展示、アシカショー、それに「海洋生物生態」という訳のわからないものがあり、最後に噴水ショーと、5つの半券が付いている。噴水ショーは夜の6:30からとあり、はなから冷やかし目的、午前中半日程度の予定で来ている私たちは、ノーチョイスで断念する。日本人としては、公正取引法違反の抱き合わせ販売ではないのかと、ネガティブな思いにさいなまれる。

気を取り直して、まずは水族館だろう、とメインの建物の奥に進むと、チケット係のおねいさんが、本館が開くのが少し遅いのか、時間を有効に使わせるためなのか、先にクラゲとアシカを観てこいと、半ば追い返されるように誘導される。お客ではなく施設本位の接客が展開されるフィリピンでは、典型的な光景だ。ただ、幻想的な照明に彩られたクラゲも、かわいく賢く躾けられたアシカも、なかなかに見応えがあり、不覚にも、「なかなかいんじゃね」感が徐々に高まっていく。

本館は、日本の海遊館に通い詰めた者にとってはお慰み程度の規模だが、そこはマニラ首都圏、そこそこ楽しめる。クライマックスはアクリルチューブのトンネルだ。ウェブサイトの写真で勘違いする限り、何が沈んでいるかわからない魑魅魍魎の世界であるマニラ湾の海底が観られるのでは、と期待していたのだが、何のことはない、あくまでも水族館の水槽をくぐるクリーンなトンネル。ほっとしたような、肩すかしを食わされたような感覚だ。

なお、この同じ大水槽は、1人150ペソの別料金で、ガラスボートに乗って水面からも観られるようになっている。トンネルを歩く他の客たちを見下ろしながら、海底人世界をも観光しているかの錯覚に陥ることができる、シュールなアトラクションだ。ちなみに、このオーシャン・パークにはプール施設もあるのだが、よりによってアシカショーの会場の一角にあり、ここでも観覧席から人間ショーを観ているかのような錯覚が味わえる。経営母体はシンガポールの企業だというが、このシュールさが、フィリピン流なのか中華流なのかは謎が残る。

そつのない本館の横にはさらに、「南極を歩く」などの、旅情をそそるアトラクションがある。客がペンギンにエサをやっているらしい写真などがそぞろ心を駆り立てるが、これは一番高い入場料を払わなければ入れない。かくして安物買いの銭失い、「このグレードのものなら最初から950ペソのコースにしとくんだった……」など、心は既に「クラゲやアシカをもう一回観てでも、また来なければ」状態にさせられている。BC級の観光文化を逆手に取った、ずるくも賢い営業戦略だ。

本館内には、別にここになくてもいいだろう的な出店も多い。水族館なのになぜ、中華街で売っているような安物手品セットから、ドイツ製の高価なホームステレオセットや調理器具セットまでが販売されているのかは、最後まで理解できなかった。本館そのものへの入場は無料なので、買い物だけに来ることも可能は可能だが、後日、よし、オーシャンパークに買い物に行こう、と思いつくためには、施設全体の地図が頭に入っているほど通い詰めている必要があるだろう。

また、鏡の世界や3D(近未来イメージなので正式名称は4D)のアトラクションなども、それぞれ1人あたり追加150ペソで楽しめる。「パンケーキハウス」などの、そこそこ信頼して利用できるレストラン等もあり、遅めの昼食を楽しむこともできた。

4番目の「アトラクション」、「海洋生物生態」(?)は、全くの肩すかしだった。入ると、水面下の様子も観ることができる水槽の中を、1頭のアシカが泳いでいるだけ。時々、こそこそと舞台裏に行ってはエサの魚を食っているようだ。なるほど、アシカの美しい流線型の身体と優雅な泳ぎは味わうことができたが、ただそれだけのために半券1枚が消えていく。明らかに私たちだけでなく、事情に詳しいはずの多くのフィリピン人を含む大半の人々が、どんな催しがいつ始まるのかと待ちかまえており、やがて裏切られたかの苦笑を浮かべながら出て行く。

結論として、このオーシャン・パーク、「Bの上」級といったところか。B級だと思って来てみると、それなりに楽しめて、「来てよかった」感や「もっぺんこよっか」感が残る。2回、3回と足を運んでこその醍醐味もあることだろう。何も期待せずにとにかく行ってみて、そこにあるものを新鮮に、時にはしらじらしいまでのリアクションで味わう ― お値段が高めなことを除いては、実は最も典型的なフィリピン観光施設だといえるのかもしれない。

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550ペソコースのチケット。夜までいる予定で行かないと、右端の噴水ショーは最初から捨てることになる。また、気をつけないと、かばんに入れたり出したりしているうちに、後回しにされた本館のチケット(左端)がちぎれかけ、首の皮一枚で風になびいている始末だ。

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原色系の照明に浮かび上がったクラゲは、思いの外、幻想的で楽しめた。

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老体にむち打って芸を疲労してくれたオスのアシカ、ビンセント。懐疑的ながらも人の良い私たち日本人家族は、新聞の訃報欄にこの子のことが載ったら泣いちゃうかもと思うほどに入れ込んでしまった。

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南国の水族館らしく、物珍しい生物は多い。が、この魚、知人の日本人牧師にどことなく似ている。

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知らず知らずに主体的に楽しむようになり、いろいろ、マネをしてみる。

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ついつい、マネをしてみたくなる。これでギャラがもらえるキミは良い身分だ。

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目玉のアクリル・トンネル。水面のボートから海底人扱いされているとはつゆ知らず。

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それでも、一番エキサイトしたのはこれ。3Dの映像に合わせて機械が動き、登ったり、落ちたり、火の中に飛び込んだりと、疑似ローラーコースター体験が楽しめる。4-5人までのグループでの利用で、地底ものやオカルトもの、近未来ものをはじめ、数々の映像のラインナップが用意されている。人によっては、2-3回は乗ってみたくなるかもしれない。

外ではモニターで、中の客の恐がり具合が楽しめる。これもまたシュールといえばシュールだ。

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2013/04/05

教育の機会均等? ― 田舎町でのYouTube

先月、仕事でアバタン(ベンゲット州ブギアス郡アバタン町:Abatan, Buguias, Benguet)にある大きな教会に行った。仕事の後に大きなレセプションのようなものがあり、多くのごちそうが出されていたが、ひときわ私たち日本人の目を引いたのは、リンゴでできた白鳥(紅鳥)だった。

一つのリンゴをうまく細工して一羽の大鳥に仕上げてあるその姿に、私たちは目が釘づけになったのだ。よく見ると、キュウリでできたイルカのようなものもあり、松ぼっくりのようなスイカの細工もあった。

聞くと、いずれもその教会のメンバーの息子さんと友人の作品で、このレセプションに合わせてユーチューブで学んだのだという。"food carving"で検索すれば、一連の作品の作り方が、ビデオで観られるのだそうだ。

道が良くなったとはいえ、バギオから2時間半の道のりだ。北ルソンのこんな田舎町にまでユーチューブの力が及び、およそ都会の調理師養成学校などには行けそうにない若者たちが、無料でビデオを観ながら学べるようになっている。私の周囲には他にも、ユーチューブでギターの弾き方をマスターしたという若者もある。英語で聴き、読むことに大きな抵抗の無いフィリピンの若者にとっては、ささやかながらも、キャリアアップのチャンスを提供してくれるものとなっているようだ。

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田舎町のフードアーチストたち。誇らしげな笑顔が、
作品以上に輝いている。

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リンゴの白鳥ならぬ紅鳥。見れば見るほどよくできている。
背後にあるのはスイカを彫刻して作られた作品だ。

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