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2008年12月の3件の記事

2008年12月17日 (水)

Nalaka ti Agaramid iti Taho(タホを作るのは簡単だ) (5)

Liday T. Segundo氏による10月20日号の記事"Nalaka ti Agaramid iti Taho"、第1段落第2文。

Naggapu daytoy iti utaw wenno soybeans, pagaayat dagiti ubbing man wenno nataengan.

試訳:これは、「ウタウ」すなわち大豆からできたもので、子供であると大人であるとを問わず、愛されているものだ。

【語義・語形成(Rubino(2000)を参照:括弧内は参照ページ)】

naggapu /nagga'pu/ <V>:(< aggapu)

aggapu /agga'pu/ <V>:~に由来する、~に源を発する(p.195)

gapu /ga'pu/ <N>:理由、原因、動機(p.195)

ag- /ag/ <Aff>:<自動詞を形成する接頭辞。完了形は"nag-"。ここでは、動作主が完全に制御できる行為>(pp.11-12)

daytoy /dai'toi/ <Pron>(代名詞):これ

iti /'iti/ <Art>:<冠詞"ti"の斜格形> / <Prep>:~に関して / <Conj>:~のゆえに(p.229)

utaw /'utau/ <N>:ウタウ、大豆

wenno /wen'no/ <Conj>:あるいは(p.643)

soybeans /'soibi:nz/ <N>:大豆(英語)

pagaayat /pagaa'yat/ <N>:お気に入り、愛されているもの

dagiti /dagi'ti/ <Art>:<"ti"の複数形>(p.144)

ubbing /'ubbing/ <N>:(<ubing)子供たち

ubing /'ubing/ <N>:子供(p.389)

man wenno /manwen'no/ <Idiom>:AであろうとBであろうと(p.353)

nataengan /nata'engan/ <A>:成熟した、(果実が)熟した、大人(< taeng)(p.586)

taeng /ta'eng/ <N>:住居、住んでいる場所、年齢、成熟度(pagyanan, naed)(p.586)

 

naggapu daytoy iti utaw

"naggapu"は、起源や由来、原料、出発点を表現する動詞。この場合、"daytoy"が主語、斜格冠詞"iti"に導かれた"utaw"が原料にあたる。

日常会話では、"Naggapu ni Juan idiay Baguio"(フアンはバギオから来た)のように、どこから来たかを言うのに使う。"aggapu"は接頭辞"ag-"からも明らかなように自動詞であり、人称代名詞の場合はAK形を取る。したがって、「活用」は、"aggapuak / aggapuka / aggapu (isu) / aggaputa / aggapukami / aggaputayo / aggapukayo / aggapuda"となる。

iti utaw wenno soybeans

"wenno"(あるいは)は、英語の"or"同様、別の単語で言い換える機能を果たしている。

pagaayat dagiti ubbing man wenno nataengan

"pagaayat"は、接頭辞"paga-"と語根"ayat"(愛)からなる複合語だが、Rubino(2000)には"paga-"の記述がない。ここでの「お気に入り」「愛されているもの」という訳は、インフォーマントによる。

"dagiti"は冠詞(複数・非人称・中心格)。複数形"ubbing"(単数形は"ubing")が共に複数であることを明示している。

"A man wenno B"は「AであろうとBであろうと」を意味するイディオム表現。ここでは、"dagiti ubbing"と"(dagiti) nagaengan"が並置されて、「子供たちであろうと大人たちであろうと」という意味になっている。

イロカノ語では、中心格の冠詞は、動詞に対しては中心格ないし斜格、名詞に対しては所有格を表示する機能を果たす。すなわち、ここでは"名詞A dagiti 名詞B"という形で、英語の"名詞A of 名詞B"(BのA)という意味を表す。

ここでは"pagaayat (名詞A) + dagiti + ubbing/nataengan (名詞B)"という構造になっており、「子供たち/大人たちのお気に入り」という意味関係になっており、これに"man wenno"が作用して、「子供たちであると大人たちであるとにかかわらず、彼らのお気に入り」といった意味を表す。

 

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2008年12月16日 (火)

「テキストして(ください)ね」 (2)

前回は「テキストして(ください)ね」を練習してみました。今回は、同じテキスト(SMS)の依頼でも、自分にではなく第3者である誰かにテキストするよう頼む場合を練習してみましょう。

イロカノ語での典型的な表現としては次のようになります(太字は強く発音する部分)。

Itexmo (man), a! (イテクスモ(マン)、!)
(テキストして(ください)ね)

Itexmo (man) kenni Juan, a! (イテクスモ(マン)・ケンニ・フアン・ア!)
(フアンにテキストして(ください)ね)

Itexmo (man) kaniana, a! (イテクスモ(マン)・カニナ・!)
(彼/彼女にテキストして(ください)ね)

Itexmo (man) kada Juan ken Mari, a! (イテクスモ(マン)・カダ・フアン・ケン・マ!)
(フアンとマリーにテキストして(ください)ね)

Itexmo (man) kaniada, a! (イテクスモ(マン)・カニダ・!)
(彼ら/彼女らにテキストして(ください)ね)

前回、ご紹介したように、これは「イ」動詞を使っていますので、テキストする内容がお互いに理解できている(と話し手は考えている)場合の用法です。また、"man"(マン)を入れると丁寧になるということもご紹介しました。

まず、「(誰々)に」という場合、"kenni Juan"(ケンニ・フアン)のように、「kenni + 人名」の形を使います。「マリーに」「バルバラに」などで言ってみてください。そう、"kenni Mari"、"kenni Barbara"のようになります。簡単ですね。

ただし、"kenni"は、1人の場合だけです。2人以上の場合は、上の例にもあるように"kada"(カ)を使って、"kada Juan ken Mari"(カダ・フアン・ケン・マ)のように言います。「マリーとバルバラに」と言ってみましょう。そう、"kada Mari ken Barbara"となります。

また、誰についてかわかっている場合には、1人の場合は"kaniana"(カニナ)、2人以上の場合は"kaniada"(カニダ)となります。英語なら、1人(1つ)の場合は"him/her/(it)"と形が変わりますが、イロカノ語はその区別はありません。フィリピン人がよく男性を指して"she"、女性を指して"he"と言うのは、そもそも言葉に性別の区別が乏しいことが大きいからではないかと思われます。

この"kaniana"、"kaniada"には、それぞれに対応する"kenkuana"、"kadakuada"という単語がありますが、これはどちらかと言うと堅苦しい印象があり、少しずつ使われない傾向にあるようです。この背景には、前者のほうが"kaniak"(私に)、"kaniam"(君に)などのように、同じ"kania-"のパターンで一貫しているということが大きいようです。"k""d"の並ぶ後者よりも"n"を含む前者のほうが柔らかく聞こえるというのもあるかもしれません。

 

 

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2008年12月11日 (木)

「テキストして(ください)ね」 (1)

前回のイロカノ語講座が「お会いできて嬉しいです」だったのに続いての企画としては唐突ですが、SMS(Short Message Service)(通称:テキスト)利用率世界一と言われるフィリピンのこと、今回は「テキストしてくださいね」を練習してみましょう。

イロカノ語での典型的な表現としては次のようになります(太字は強く発音する部分)。

Itexmo a! (イテクス・ア!)
(テキストしてね)

Itexmo man a! (イテクスモ・マン・!)
(テキストしてくださいね)

Itexmo kaniak a! (イテクス・カニアク・ア!)
(私にテキストしてね)

Itexmo man kaniak a! (イテクスモ・マン・ニアク・!)
(私にテキストしてくださいね)

「テキスト」は、イロカノ語でも英語をそのまま使って"text"となります。ただし、"k""s""t"と「子音」(「あ・い・う・え・お」を伴わない音)が3つ続くことは、イロカノ語本来ではあまり見られないことですので、最後の"t"を落として「テクス」(/teks/)と言う傾向にあります。

これを「テキストする」と動詞にする場合には、2つの可能性が考えられます。1つは「アグ」(/ag/)を頭につけて「アグテクス」(/agteks/)とする方法、もう1つは、「アグ」の代わりに「イ」(/i/)を頭につけて「イテクス」(/iteks/)とする方法です。

外来語をイロカノ語の動詞にするわけですから、どちらでも言った者勝ちのところがあるわけですが、一般的には後者の「イテクス」がよく用いられているようです。この理由としては、「イ」をつける形が、文法的には他動詞で、目的語を取りやすいということが挙げられます。例えば、"Itexmo ti naganna!"(イクスモティナ~ガンナ)(彼・彼女の名前をテキストしてね)のような表現です。この場合、"ti naganna"「彼・彼女の名前を」が、目的語にあたるわけです。

「イテクス」が好まれるもう一つの理由は、この「イ」が、おもに移動や配置を表す動詞を作る際に用いられるということがあります(Rubino 2000, lxiii)。Rubinoは、次のような動詞を挙げています。

 

語根(概念)

「イ」動詞

意味

pan(行く)

ipan

持ってくる

ruar(外)

iruar

外に置く、外に持っていく

awid(家に帰る)

yawid (<i+awid)

家に持って帰る、家に持って帰ってくる

ted(与える)

ited

与える

kastoy(このように)

ikastoy

このようにする

bolsa(ポケット)

ibolsa

ポケットに入れる

 

「テキストをする」というのは、まさに「テキストを送る(=移動させる)」行為であるわけですから、この「イ」をつける形が、意味的なパターンとしても実にはまるものであるわけです。それに対して、「アグ」の場合は、「送る」ということよりもテキストを打つ行為そのものを意味する力が強いので、上の、テキストをする内容を言い表しやすいという便利さも相まって、「イ」の形が好まれるというわけです。

さて、「テキストする」という動詞が決まると、今度は「誰が」の部分です。この例の場合は「テキストしてね」ということからわかるように、相手にお願いするわけですから、親しい間柄なら「君が」にあたる"-mo"(モ)を"itex"の後ろにつけて"itexmo"(イテクスモ)とします。

「アグ」の場合ならば、同じ「君が」にあたる意味でも"-ka"(カ)を使って"agtexka"(アグテクスカ)とします。このように「アグ」を使う例も、見られないわけではありません。

これで、基本的な骨組みができました。"Itexmo!"(イテクスモ!)です。しかし、これでは「テキストしろ!」のような強い意味になってしまいます。そこで、日本語の「テキストしてね」の「ね」にあたる"a"を一番最後につけます。"Itexmo, a!"(イテクスモ・!)です。

また、「テキストしてね」ではなく「テキストしてくださいね」と丁寧に表現したい場合には、"Itextmo man a!"(イテクスモマン・!)のように"man"(マン)を使います。この場合、"n"は、日本語の「女(おんな)」の「ん」のように、舌を上あごにつけて発音しますので注意が必要です。「ア」は、離して言う場合が多いですが、くだけた早口の場合は「イテクスモマナ!」のように、"n"とくっついてしまうこともあります。

また、「私に」テキストするということを言葉にして言いたい場合には、"kaniak"(ニアク)をつけますし、その場合も"man"をつけて丁寧にするのはいっこうにかまいません。

なお、「イテクス」を使う場合の制約としては、テキストをする内容が原則的に互いにとって既にわかっている場合に限られます。そういう意味では、いわばあうんの呼吸で「テキストしてね」と言っているわけです。

また、英語の"Text me!"からの類推で、「私に」にあたる部分を目的語として言う言い方もあります。この場合は"Itexnak a!"(イテクスナック・!)のように、「君が」を意味する"-mo"と「私を/に」を意味する"-ak"が混ざり合った"-nak"(ナック)という形を使います。これは、タガログ語の「愛している」が"Mahal kita"のように、「私が」を意味する"-ko"と「君を/に」を意味する"-ka"の混ざり合った"kita"を使うのとよく似ています。このあたりはイロカノ語文法の複雑な部分なので、わからなくても適当に流しておいてください。

 

 

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