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2008年11月の2件の記事

2008年11月25日 (火)

ブロガーたちへのエール

時はブログ真っ盛り。11月17日付BannawagにはClairie A. Sumahit氏による"Dagiti Agtawid"(継承する人々)という記事がある(pp.10, 36)。Sumahit氏は、自分が講義をする際、つかみの言葉として次のように口を開くのだという。

Agsuratka, ta kalpasan a naibusen dagiti tsokolate ken nagango metten dagiti sabsabong, addanto latta dagiti isuratmo. (p.10)

【試訳】

書きなさい。なぜなら、チョコレート<複数>が無くなってしまっても、花<複数>が枯れてしまっても、君の書いた物<複数>は残るのだから。

 

細かい解説は下に挙げておくとして、いかがだろうか。チョコレートと花という身近なものを使って対照させた、なかなかにしゃれた表現ではないだろうか。ブロガーの皆さん、どんどんと良い言葉を書き綴りましょう。皆さんの言葉もまた、この世の続く限り(プロバイダーさんに削除されない限り!)、いつまでも残るのですから。

 

【語義・語形成(Rubino(2000)を参照:括弧内は参照ページ)】

agsuratka /ag'suratka/ <V>:書きなさい(< ag + surat + -ka)

agsurat /ag'surat/ <V>:書く(p.580)

-ka /ka/ <Encl.>:君<絶対格2人称単数>(p.230)

ag- /ag/ <Aff>:<自動詞を形成する接頭辞。完了形は"nag-"。ここでは、動作主が完全に制御できる行為>(pp.11-12)

surat /'surat/ <N>:手紙、書き物、メモ、書かれた物(p.580)

ta /ta/ <Conj>:それで、なぜなら(gapo ta)<原因節と結果節を結び合わせる>(p.584)

kalpasan /kal'pasan/ <Prep, Adv, Conj>:~の後、後に(p.243)

a /a/ <L>(リンカー):<文の様々な統語的要素を結び合わせる>(p.3)

naibusen /nai'busen/ <V>:(< maibus+ -en + na-)

maibusen /mai'busen/ <V>:消費される、使い尽くされる、終わる、締めくくられる(< ibus + ma-)(p.213)

ma- /ma/ <Aff>:<ある行為の能力、非意図的ないし偶発的な発生、受動的可能性、共起的本質を示す。完了形は"na-">(p.346)

-en /en/ <Encl>:<母音の後では"-n">既に、期待していたよりも早く、(進行形の動詞と共起して)今、<状態の変化を示したり、指示物を対照させたりすることもある>(p.182)

dagiti /dagi'ti/ <Art>:<"ti"の複数形>(p.144)

tsokolate /choko'late/ <N>:チョコレート、ココア(スペイン語:chocolate)(p.637)

ken /ken/ <Conj>(接続詞):(A)と(B)(p.269)

nagango /na'gango/ <A>:乾いた、枯れた、しおれた、共感しない(p.195)

metten /met'ten/ <Adv>:~もまた、<期待を反して意外に>(< met + -en)(p.367)

met /met/ <Adv>:~もまた、~だけれども(婉曲な不同意を表す)、その他に

-en:上述

dagiti:上述

sabsabong /sab'sabong/ <N>:花<複数形>(sab- + sabong)

sabong /'sabong/ <N>:花(p.512)

addanto /ad'danto/ <V>:あるだろう(adda + -to)

adda /ad'da/ <V>:ある、いる(pp.9-10)

-to /to/ <Aff>:<未来形を形成する接尾辞。母音の後では-ntoになる>(p.621)

latta /lat'ta/ <Adv>:~だけ、ただ~(p.321)

dagiti:上述

insuratmo /i'suratmo/ <V>:(< in- + surat + -mo)

surat:上述

in- /i/ <Aff>:<"i-"の完了形><対象焦点動詞を形成する一般的な接頭辞。行為者に-ko類代名詞を取り、絶対格の項が行為のための道具、行為の対象であることを示す。完了形は、子音の前では"in-"、母音の前では"iny-">(p.213)

-mo /mo/ <Encl>:君<能格2人称単数>(p.369)

 

agsuratka

"agsurat"は自動詞なので、後椅辞"-ka"は動作主(君が書く)。また、"agsurat"は未完了形なので、習慣的な行為、ないしは命令の意味になる。

kalpasan a naibusen

"kalpasan"は、名詞が続く場合は斜格マーカー(典型的には単数形の"iti")、節が続く場合はリンカー(典型的には"a")を伴う。ここでは"naibusen"と動詞が続く、すなわち節が続くので、リンカーの"a"を取って「無くなってしまった後」という意味になっている。

naibusen dagiti tsokolate / nagango . . . dagiti sabsabong / addanto . . . dagiti insuratmo

イロカノ語の基本文型は、述語+主語。ここでは、述語は"naibusen"、"nagango"、"addanto"、主語は"dagiti"で導かれた"tsokolate"、"sabsabong"、"insuratmo"。

dagiti tsokolate / dagiti sabsabong

"sabsabong"は、"sabong"(花)自体が数えられるものであり、形式も複数形なのでわかりやすいが、"tsokolate"(チョコレート)は、"dagiti"にマークされることで複数であるとされても、どういう複数なのか曖昧さが残る。ちなみに、本文には、著者自らによる英訳があり、"the chocolate boxes"と、チョコレートの箱が複数個であることが語られている。

nagango metten

「既に」の意味を表す接辞の"-en"が、述語"nagango"ではなく、「~も」の意味を表す副詞"met"についている(すなわち、"nagangon met"ではなく、"nagango metten"という形になっている)のが面白い。というのも、イロカノ語では普通、いろいろな意味を表すこういった細かい要素は、できるだけ前の単語につこうとする性質があるからだ。"metten"というのは、一つの好まれるパターンのようになっている感がある。日本語で言う「語呂が良い」というやつなのだろうか。それとも、認知的になんらかのメカニズムがあるのだろうか。

addanto latta

Rubino(2000:p.321)には、"latta"と"laeng"について、対照的な例が挙げられている。同様に「ただ~だけ」という意味の副詞だが、"Manganka latta."は、「(他のことは気にせず)ただ食べなさい」の意味、"Manganka laeng."は「(他のことはせずに)ただ食べなさい」の意味だという。この場合は"latta"なので、他のものはすたれても、書かれた物は残る、という意味か。

dagiti insuratmo

"insuratmo"は「君が書いた」という意味の動詞だが、冠詞の"dagiti"でマークされることによって、英語で言う動名詞的な働きをしている。また、"dagiti"が複数であることによって、この「君の書いた物」も複数であることが示されている。

英語では"-ing"、日本語では「~するもの/こと」などのように形態的に明示的な形式がある言語とは異なり、イロカノ語では冠詞がつくだけで意味が変わってしまう。便利でもあり、わかりにくくもあり、というところだろうか。

 

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2008年11月22日 (土)

オフィスの引越し

ここ10日ほど、所属するキリスト教系専門大学院から、急に別の建物のオフィスへの引越しを命ぜられ、てんてこまいしていた。まだまだ、書類などの段ボール箱には手つかずだが、一通りの蔵書の整理が終わったので、引越しの様子をアルバムとしてまとめてみた。よろしければご覧ください。イロカノ語のネタからはずれますが、フィリピンにいる少し変わった日本人の、フィリピンにおける少し変わった風景として、何かのお楽しみにはなるかもしれません。

今回の引越しは、アルバムにも登場しているARC(AsiaだったかAcademicだったかResearch Center)という5階建ての新しい建物が完成したことで、学期の途中ながら急きょ、教師たちの大移動となった。1-2階が蔵書15万冊を目指す図書館、3階がコンピューター室を含む学生のためのフロア、4階が教室、5階が教師たちのオフィス階という構造だ。

私はそちらではなく、所属部署の関係から、別の7階建ての建物内のオフィスへの移動となった。今回の引越しによって生じた雑用はまだまだ山のように残っているが、今後はまた、こちらのブログにも少しずつ復帰できるものと願っている。今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。

 

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